学校健診を憂う

 夏風邪、コロナ、RSなど、ウイルスによる発熱のお子さんが本当に多いです。毎日ひとりは入院の子がいるみたいな状況です。7月にインフルエンザを経験するのは開業して以来初めてのことで、スタッフとも首をかしげながら、毎日の診療にあたっております。コロナは明らかに変異したみたいで、沖縄県みたいに爆発的には増えていませんが、パラパラと2回目や3回目の陽性者も来られます。そんな繁忙の中、日本小児科医会の「子どもの心」研修会で、土曜日をお休みにしてまで、東京へ出張してきました。いろいろと公的な役も当たっているので、本当にごめんなさいです。今、帰りの新幹線の中で、頑張った自分にご褒美のワインで乾杯しながら、この駄文を書いております。
 今回の研修会では、映画監督の豪田ともさんのオンライン講演もありました。講演タイトルは「子どもたちの心の声に耳を澄ませてみませんか ?」で、子どもたちに対話をさせる「こどもかいぎ」という作品を部分的にですが、動画で観せて頂きました。子どもたちに意見を自由に喋らせるのってすばらしく良いことだなぁ~って実感しました。残念ながら、今どきの小学校って、子どもたちは少し騒ぐと、「静かにせぇや~!}って常に黙らされているんです。でも、結構自分の意見はしっかり持っているし、しかも鋭い見方をしているものなのです! この映画、ぜひ、観てほしいなぁと思いました。
 兵庫県小児科医会が今秋40周年になります。その際の記念講演に豊岡の芸術文化観光専門職大学学長の平田オリザさんをお呼びしています。今から本当に楽しみです。オリザさんの著書「わかりあえないことから」にも書いてあったのですが、日本人って大人になってからも対話が下手です。日本列島というアジアのガラパゴスで培われたせいなのでしょうか、多くを語らずとも分かり合えている前提で、みんな話し合おうとするのです。意見の対立はなるべく避けて、深く煮詰めることもなく、なんとなく非常に大切な事項が決まっていきます。民主主義の概念なんて、単なる多数決、つまり数字の理論くらいにしか考えていないので、政治の世界では「それはありえないやろ!」という法律も与党議員の数の力でどんどん可決されていきます。それは小さなムラ社会でも同じです。結局は、その組織のリーダーが真実へ向かう方向性をちゃんと持っているかが大切なのでしょう。
 先月、学校医を拝命している関係で、小学校の水泳前健診に伺いました。この健診では、アレルギー、てんかん、心臓病などの持病を持っている児童を学校のプールで泳がせてもよいかどうか、相談するための健診でした。でも、この3年間以上も続くコロナ禍で、健診に来られる方の状況もすごく変化してしまいました。今年、最も多かった相談は、「もとに病気はないんだけど、学校の水泳の授業が本当に嫌!無理!プールはお休みしてもいいですか?」でした。しかも、4年生くらいの男の子が健診でさめざめ泣くんです。いかに水泳の授業がつらいか、地獄のシャワーが冷たいか、冷水のプールに入るのが痛いか…トラウマになっている感がハンパないんです。そんな不安が強い、無気力な子が増えています。今回の研修会でも、小中学生の不登校児童は急増していて、全国で約24万人、コロナ前より3割近くも増えているそうです。うちにも毎日のように学校に行けない子が受診されます。子どもたちに本当に必要な、大切なことを、大人が、とくに政治家やリーダーがじっくりと考えて頂きたいものだと思います。今年から姫路市の子ども子育て会議の委員にもなりました。幼少期からの教育って本当に大切です。その子の心の土台、礎になりますからね。明日からも診療、頑張ります~!!!

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