超少子化時代の子育て支援とは

兵庫県小児科医会報 春号の巻頭言に寄せた文章です、どうぞ。

昨年の出生数は80万人を割り込み、想定を超える早いペースでの少子化が止まらない。国も子育て関連の予算を倍増し、安心して子どもを産み育てられる社会環境の整備を図ろうとしている。その一施策として、子育て世代包括支援センターと子ども家庭総合支援室を統合させた「こども家庭センター」が全国の市区町村に設置されることになった。4月に創設されたこども家庭庁の所管で、すべての妊産婦、子育て世帯、子どもたちへ一体的な相談支援を行う機関である。虐待や貧困などの問題を抱える家庭にはサポートプランを作成し、家事や育児の援助を行うことを想定している。さらに、家庭や学校以外で子どもたちが安心して過ごせる居場所づくり、育児負担軽減のための一時預かり施設の紹介なども行い、児童相談所など他機関との連携調整の役割も担っていくことが期待されている。

健やか親子21の重点課題である「育てにくさに寄り添う支援」を、小児科クリニックでできないものかと試行錯誤の末、8年前に児童発達の通所支援事業所を開設した。発達が気になる児への療育に加え、セラピストたちによる保育所等訪問支援、ペアレントトレーニング、親子教室なども実施している。親の子育てスキル、メンタルヘルス、愛着の形成が、幼少期の子どもの発達や行動にいかに強く影響するかを日々実感している。小児科医の行う子育て支援とは、まさに発達支援なのである。

一次の発達支援に専門的な診断・治療はほとんど必要ない。子育ての基本は定型発達児も障害児も同じだからである。小さな命の誕生を祝福し、安心感を与え、慣れない育児を笑顔で見守る。毎日の生活習慣、食べる・眠る・遊ぶをリズムよく楽しめる方法を保護者へ具体的に伝える。小児科クリニックが地域の子育てアジールとなって、親の子育てへの意欲や自信を高めることが、ひいては少子化の歯止めになるものと確信している。我々、小児科医ももっと子育てを楽しもう!

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