ひさしぶりのラジオ関西で収録です

2年間かけて兵庫県医師会でしていたお仕事がまとまりました。
県内の各市や町でどのような産後ケアが行われているか、まとめたものです。
5月16日に収録してきたので、6月1日の朝に放送されます。
ラジオ関西「みんなの健康相談」で、興味のある方は聞いてみてくださいね~

https://jocr.jp/audio/#kenkou
Q1:令和の時代になって、日本では子どもの数がどんどん減ってきていると聞きました。
少子化って、そんなに深刻なのでしょうか。
対策はどのように行われていますか。
A1:1970年代のベビーブームでは日本の1年間の出生数は200万人を超えていました。
1980年以降は毎年減り続け、 2015年には年間100万人にまで減少しました。
さらに、この3,4年は予想をはるかに超えて減ってしまい、昨年の出生数は年間75万人になっています。
つまり、この10年間で1/4も減っているので、このままのペースであと30年もすれば、日本は子どもの生まれない国になってしまうかもしれません。
そこで国も異次元の少子化対策、こども未来戦略として、子育て世帯への児童手当を拡充したり、出産や育児での負担を軽減するよう、様々な施策を実施しています。
子どもが減り、子育てそのものが社会で身近なものでなくなってしまったので、女性が妊娠・出産・育児を経験される際に、地域の自治体が切れ目なく寄り添い、伴走型での相談支援を行うというのが主流になっていきます。

Q2:それで、内閣府にも「こども家庭庁」ができて、女性の妊娠、出産、子育てをもっと応援しようとしているのですね。
この産後ケアもそんな子育て支援のひとつなのでしょうか。
A2:はい、そうです。もともと産後ケアっていうのは、出産後にお母さんの母乳がしっかり出るように、乳腺を開かせるおっぱいケアを助産院などでするくらいでした。
でも、妊娠や出産は、女性の心と体に短期間で大きな変化をもたらします。
今から10年ほど前に、妊娠中や産後1年未満に亡くなられた妊産婦さん357人の死亡原因を調べたところ、自殺が102人と最も多いことが明らかになりました。
産後うつなどの母親になった女性の心の不調や、妊娠、出産での負担が、いかに深刻なものであるかが窺えます。
また、核家族が増えたので、出産後に身近な家族から助けてもらえず、とくに都会では母親だけの孤独なワンオペ育児が急増しています。
最近の社会問題になっている児童虐待を防ぐために、令和元年に母子保健法が改正され、産後ケアの内容や期間もさらに充実しました。
助産師や保健師といった資格を持ったケア専門の方が中心となって、お母さんの身体の回復と心理的な安定をうながすとともに、母と子の関係を良くして、家族みんなで健やかな育児ができるよう見守ることを目的としています。

Q3: 産後ケアが以前よりもさらに充実してきたっていうことですね。
どんなふうに手厚くなってきているのでしょうか。
A3:従来は、出産後から赤ちゃんの首が座る生後4か月くらいまでの期間が、
産後の母親の心と体の回復のために注意が必要な時期とされていました。
しかしながら、小さくお生まれになった赤ちゃんや病気をもってお生まれになった赤ちゃんに、
生後4か月を超えて入院が必要な場合もあることや、母親の自殺は出産後5か月以降にも認められるということで、産後ケアの実施期間が出産後4か月までから、出産後1年までへと、期間が延長されました。
ケアの内容としては、母親への心と体のケア、赤ちゃんへの授乳指導、栄養指導、子育て相談、
家族等の身近な支援者との関係の調整、地域で育児をしていく上で有効な子育て支援センターの紹介などを行います。
産後ケアは、産科の病院や診療所、助産所、その他保健センターなどでも行われていますので、
各市町の母子保健担当部署に確認してみてください。

Q4:産後ケアって、いくつか種類があると聞きましたが、具体的にはどのようなケアがあるのでしょうか。
A4:形式としては3つの種類があります。
ひとつ目は、 お母さんと赤ちゃんが一緒に一泊二日で宿泊してケアを行いながら、食事の提供もしてもらえる短期入所・ショートステイ型で、産科の病院や助産所の空ベッドなどが利用されています。
ふたつ目は、施設に通って、育児相談やサポートを受ける、通所・デイサービス型で、
母親の心身の疲労が蓄積している場合、レスパイトといって、お母さんが赤ちゃんを預けて休息をとられるために利用をすることも想定されています。
とりあえず、2~3時間でいいから寝かせてほしいみたいなお母さんも多いそうですから。
3つ目は専門の助産師さんが自宅へ訪問して支援するアウトリーチ型です。
利用期間は原則7日以内になっています。
兵庫県内もほとんどの市町で出生数は減少しているにもかかわらず、
産後ケアの利用はこの3年間で、ケアの施設数も1.5倍、利用回数は2倍に急増しています。
とくに阪神間の都市部での増加が明らかです。

Q5:そんなに増えているのですか。出産されたご家族にとって、本当に必要な事業だということですね。
ますます充実してほしいですが、なにか問題はありますか?
A5:昨年、兵庫県医師会の乳幼児保健委員会で調査をしたところ、産後ケアの責任が市や町にあるため、
ケアの実費や利用日数、利用条件などが市町で個々に設定されていて、非常に格差のあることが判明しました。
国からのガイドラインに、「妊娠・出産・育児に不安を抱えていて、身近に相談できる者がいない、双子や三つ子、障害児や病児を抱える妊産婦などにケアをする」と明記してあるので、
祖父母と同居しているだけで、ケアを希望しても利用ができないとか、里帰り分娩されて産後に滞在しているご実家が別の市町の住所だと利用できません、みたいなことも実際にあります。
そもそも子育て支援事業への取り組みが自治体によって非常に格差があるのです。
理由はいろいろありますが、当然、市町の予算の問題、実施施設が足りないとか、事業そのものを妊産婦さんや医療機関に情報としてきちんと伝えていないとか。

Q6:これからの産後ケア、子育て支援として、小児科医の立場からのお考えを教えてください。
A6:産後ケアを実施するためにはスタッフに助産師が必要という規則の市町も多いので、
兵庫県で産後ケアを実施している小児科はまだほとんどないのが現状です。
しかしながら、東京や大阪などの都市部では小児科クリニックで産後ケアを併設されている所もあります。
産後ケア事業といっても、家族のニーズは様々なので、おっぱいのケアなのか、母親の休息なのか、育児支援、はたまた育児不安や産後うつへの心理カウンセリングなのか、今後は産後ケアの目的を明確にして最適な施設で対応していく必要があると思います。
小児科医は、もともと子育てに困っている家族に気づき、じっくり話を聴いて、温かく見守り、適切な支援先につなぐことが得意なので、乳幼児の健診や予防接種の機会に気軽に相談できるような産後ケアを、ぜひ小児科クリニックでも行えるように制度が柔軟になっていってほしいと思っています。

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